第7章 蠱毒の弱点
〜 妃翠 視点 〜
このタコの腕から、逃れなきゃ…。
逃げる事を考えなきゃいけないのに、身体が思う様に動かない。
「 妃翠!! 」
「 ガ、ハッ!!ッ!! 」
ママみたいに大きいパンダの声が遠くに聞こえる。
大丈夫、心配しなくても死にはしないって言いたいけど、沈む身体に如何することも出来ない。
「( ママ…… )」
ママ、如何したらいい…?
水の中で蜘蛛の糸は威力が落ちて使えない。
バッタの脚も踏み場が無いから出来ない。
水中の中では声も出せないし、
羽を出したところで飛べる気がしない。
全ての能力を使い切ったから、手の施しようがない。
「( アァッ!! )」
手足が掴まれ、タコの触手によって捻りちぎられた痛みに、水の中で声が漏れる。
直ぐに呪力で手足を戻しても、それをまた同じ様にされるから、自分で拷問を繰り返してるような気になる。
薄っすらと目を開けば、タコはカニのような大きな口を開いた。
「( 取り込まれる!! )」
「 妃翠を離せよ!! 」
「 ググッ!! 」
「( パンダ!? )」
水面から出てる部分を殴ったパンダによって、身体を揺らがしたタコは、脚を掴んだまま大きく揺れた。
パンダはそのまま、ツルツルのステージの上に立てば、何度も殴ったり蹴ったりを繰り返す。
「( いや、パンダ!!私が振り回される!! )」
左右に動くタコに合わせて、水中で洗濯機の中にいるような気分になるぐらい、身体は動く。
水圧に眉を寄せ、何とか触手からは逃げようと身体を動かし、触手に向け風鎌を放つ。
「 ギッ!! 」
やっと腕が切れて外れた事に安堵して、そのまま落下すれば、ステージの水槽の底に背中が付いた。
「( これなら、いけるかも…! )」
脚を当てる場所が無かったけど、底に付いたなら出来ると思い、勢い良く膝のバネを使ってジャンプすれば、タコの身体に向け拳を打ち付けた。
「 ググァッ!! 」
大きな水飛沫を立て、水面から身体が完全に出たタコに、横から笑う声が聞こえた。
「 ナイス、妃翠!! 」
「 マー!( 真希! )」
両手に持っていた剣を使い、タコを三枚下ろして切った。
それを落下しながら見た後に、身体を回転させトドメとして、ムカデの尾を振り、猛毒と共に更に切り落とした。