第7章 蠱毒の弱点
ぶん回されていた妃翠はそのまま水面へと何度も叩き付けらる。
「 妃翠!その変な触手から逃げなきゃ駄目だぞ! 」
大型水槽…此処からジャンプして殴りに掛かったところで、俺も水槽の中に落ちそうだ。
ほら、俺…パンダだけどぬいぐるみだからさ、最初は浮くけど、水を含むと鉛みたいに重くなって動けなくなるんだよ。
俺が水中戦をしたところで、あのタコにボロクソに絞め付けられて、身体がバラバラになるのが目に見えてるから、如何しようかな…と悩む。
「 ブハッ!…ゴホッ、ゴホッ 」
「 グルルッ!! 」
「( あれ、妃翠…なんで反撃しないんだ?もしかして…出来ない!? )」
いつものように鎌でスパンっと触手を切ればいいのに、それをしないまま振り回されてるのを見て疑問になる。
何故、抵抗しないのか…いや、出来ないだ。
「( 妃翠は虫だから!水が苦手とかなのか!? )」
〜 七海 視点 〜
「 遊園地の次は水族館ですか… 」
「 そっ、妃翠には子供らしい色んなものを見せたくて 」
何処に行かせるのか、その話は事前に聞く。
いや、今回は向かわせた後だったのだが…
水族館と聞いて、後々の弁償より他の事が気掛かりだ。
「 別に構いませんが。もし、水中戦を得意とする敵がいたなら…少し厄介かも知れません 」
「 どうして? 」
「 妃翠は…泳げないんです 」
「 え? 」
虫である事が原因なのか、お風呂に入る事は出来ても、溺れる確率の方が高い。
前に妃翠を湯船の中に残したまま、少しだけ目を離して、脱衣場に石鹸を取りに行った事がある。
「 嗚呼…ありました。…ん? 」
ほんの数十秒の間ですが、風呂場の方からバシャバシャと水を弾く音が聞こえた為、遊んでるのだろうかと思い、戻って見れば……
そこには、俯せになって藻掻いていた妃翠の姿があった。
「 大丈夫ですか? 」
すぐに脇腹を支えて、起こせば咳き込んだ妃翠は私の身体へと抱き着いてきた。
たかが40cmもない水深で、溺れてたのを見てから目を離すのを止めました。
「 …ごめん、笑っていい?( 普通に、一緒にお風呂入ってるって…ククッ )」
「 ぶん殴りますよ 」