第5章 任務に同行
まさか、と思って見ていれば蜘蛛の糸は徐々に解けていき、中から2人の少年が出てきた。
「 ブハッ!!苦しいって!! 」
「 あれ…俺、死んだんじゃ…… 」
「 翔太!?健!!心配したんだからな!! 」
茶髪の少年と、黒髪の少年は其々に自分の身体を見た後に抱き着く彼に驚いてから笑っていた。
死んでない……?
傷すらない様子に疑問を抱き、ニコニコし始めた彼女を見てると、聞く事も失い、連絡を入れる。
「 もしもし、七海です。3人の生存者を確認しました。後は頼みます 」
「 君、ありがとうね!! 」
「 マジで助かった!感謝してる!! 」
「 マァーマー! 」
「( 特級呪霊が感謝されるとは…こんな時もあるのですね )」
もしかすれば人間には到達出来ない、反転術式を使ったかもしれないが、それでも人が死ぬ事が無いのなら良かった…。
「 じゃ、俺はこっちだから。翔太、健またなー! 」
「 おん!またな!! 」
「 じゃな! 」
近くまで送り届けるよう言われた為に、車で送り届ければ、少年は歩き出し、二人は手を振り彼を見送った。
「 では、お二人も送りますよ 」
「 いやー、俺達は、此処でいいよ。最期に別れも言えたし 」
「 そうそう、妃翠だっけ?律とさ…会わせてくれてありがとな。彼奴、きっと自分が誘ったからって後悔すると思うし、だから俺達はその後…病死って事にでもしててくれよ 」
何を言っているんですか?その言葉は、彼等の表情を見て口を閉じた。
あの時、妃翠は二人を死体のように扱っていたのは確かだった。
生存者に向ける表情には違和感があるほど、悲しげにしたのも知っている。
「 マァーマ… 」
左右に首を振った妃翠に、二人は不器用に笑い、身体はその場で砕け散った。
これが、彼女が見つけた時の姿のように、骨も身もバラバラになっていた。
「 マァ…… 」
「 別れを言う為だとは言えど、死者の肉体を繋ぎ直し、一時的にでも動かす事は賛成しません 」
「 マァマ…… 」
「 ですが、見せない方がいい事もあるので、今回だけは許しましょう 」
これが、彼女の能力なのだろう。
蜘蛛の糸で精密に繋ぎ合わせた肉体なら、死んで尚、一時的に動かす事ができる。
特級呪霊らしい、敵なら酷い術式だ。