第4章 恵と手合わせ
親だと思い、巫山戯たように人間が友達という彼等の言葉を気にもせず、パンダ先輩の背中からゆっくりと出てきた少女は、玉犬に近付きしゃがみ込んで片手を向けた。
白は手の匂いを嗅ぎ、敵対心がないと分かったのか尻尾を揺らし始めた。
「 マー!ンー! 」
「「 ワフッ! 」」
「 ほらみろ、恵より理解力早いじゃねぇか 」
「 …そうですね 」
呪霊なら食うだろうに、食わない様子を見れば玉犬も敵だとは思わなくなったのだろう。
この呪霊にどんな力があるか分からないが、玉犬達を傷付ける様子が無いために放置していた。
次第に犬達と遊び始め、追いかけっこをする様子を三人で眺めていれば、ふっと思う。
「 俺達って、子守りしてるんですか 」
「 やっぱりそう思うよな!? 」
「 えー違うだろ。可愛いなーって眺めてるんだよ 」
「 しゃけ 」
「 いや、如何考えても子守りでしょ 」
玉犬をずっと出すのも疲れるんだが、遊んでる様子を見てると直すに直せない。
それに普段なら彼等は手合わせしてるようなのだが、そんな様子が無い。
只ずっと眺めてる事に疑問になる。
狗巻先輩とパンダ先輩は気にしてないみたいだが…。
「 んー、正直…俺達も今日から妃翠が来てどう扱えばいいか分からないんだよな。棘みたいに話せりゃいいんだが…幼いし、小さいから、鍛錬に付き合わせるのもなーって 」
「 それに悟との戦闘を見たが、あれは悟だから無傷で済んだが…私等が機嫌でも損ねて、猛毒でも撒き散らされたらたまったもんじゃねぇからな 」
蠱毒の呪霊なら、様々な毒虫達の能力を持っていてもおかしくは無い。
最後の1匹が残り、それまで喰って倒した虫の毒を得て、使われる呪術だ。
特級呪霊と言うなら、下手に攻撃された時に対処しきれないってことか…。
「 随分と弱気なんですね。手合わせぐらいしてみりゃいいじゃないですか 」
「 恵やるのか 」
「 見てるだけは暇なんで 」
手合せということを理解するかは分からないが、五條さんとどう戦ったのか見てないから知るわけ無い。
それなら、知っていたいと思う興味が湧く。
玉犬達に指示をし、自分の所に戻せば少女は此方を向く。