第3章 金髪はママ説
飲み物を求め、食べ物を食べる。
最初は興味かと思っていたが、自分の食べれる物を判断してる様子に違和感はあった。
そして、触れた時の肌の感じや柔らかさ。
全てが人間そのものだったからだ。
五条さんから向けられたスマホの画面を見て、
確かに、そこには寝てる姿の妃翠の姿があった。
「 まっ、そんな気はしてたけどね。この蠱毒…赤子を喰らったが、赤子に喰われたか、分からないけど…。受肉してるのは確かだよ。特級呪霊だと思われて、1300年間、壺に詰め込まれていたんだろうなぁ 」
「 知ってたんですか 」
「 確信はなかったよ?推測だけ。七海も違和感はあったでしょ 」
「 まぁ…食べ物を欲しがるので 」
ママと言うのも、肉を得る時に子供の想いも含まれてるのだろう。
それこそ、貴族の娘が腹に宿していた赤子かもしれない。
1300年前の話なんだ。
多少の食い違いや、話の内容が違っていても無理は無い。
「 呪霊か、人か分からないから。1年組も違和感なく遊んでたんだろうねぇ。俺は分かるけど 」
少女の横へと座った五条さんは、何を思ったのか折角寝かせた子供を起こすように、脇腹を持てば軽々と抱き上げた。
「 ん…… 」
寝ていた妃翠は、瞼を開け眠そうな眼で五条さんと目が合えば、身体は硬直した。
「 ははっ、そう怯えなくても、もう君を攻撃しないって、仲良くしよう?名前は? 」
「 妃翠。そう名付けました 」
「 へぇ、妃翠。今日から宜しくねっ 」
良い名前だね、そう告げた五条さんだが、当の本人は何一つ笑顔にならない。
よっぽどボコスカ蹴られたのがトラウマなのだろう、私の方を向くなり両手を広げた為に、仕方なく受け取る。
身体に抱きつき肩口へと顔を擦り寄せる様子に、彼はケラケラと笑う。
「 七海〜、懐かれたね。ベタ馴れじゃん。その内、母乳でも出るんじゃない? 」
「 切り刻んでいいですか 」
「 冗談だって!怖っ…… 」
この人の冗談は腹が立つ為に、もう一度変な事を言えば弱点作り出して切ろうと思った。
そんな事も知らず、妃翠はその格好のまま眠っていた。
子供なら、食べて寝るを繰り返すでしょうね。