第3章 金髪はママ説
教員に与えられた休憩スペース。
多少の仮眠は許されてる為に、ソファーに座り、
少女を荷物のように横に置けば、深く息を吐く。
昨日から色んな事が立て続けにあり、休まる時がない。
まだ、リーマンだった時の方がマジじゃないかと思う程、気疲れしていれば、少女は片手を太腿へと当てる。
「 マンマー 」
「 嗚呼、飲み物ですか?ありますよ 」
この部屋に持って入っていたカバンを引き寄せ、中から野菜ジュースを取り出し、ストローを挿せば差し出す。
ぱっと明るい笑みを向け、受け取ってから飲む様子を見て、片手を伸ばし頭へと触れ後頭部を撫でる。
「 名前…名前ですか… 」
少女、呪霊、蛾、そんな呼び方しかしてなかった事を思い出し、まともな名前が必要だと改めて思う。
薄い妃翠色の髪に、瞳。
確か、オオミズアオという蛾で無かったか?とスマホを取り出して検索すれば、確かにその蛾で間違いは無かった。
壺に入れられ、毒虫と闘う蠱毒の中で生き残れる理由は分からないが、それでも残ったのがこの子に間違いは無いのだろう。
「 名前ですか…。妃翠とか、どうですか? 」
「 マーァ…? 」
「 まぁ、上手く言えてませんが…。反応したのでこれでいいでしょ 」
少なからず名前だと認識してくれれば問題ない。
どうせ、五条さんの事だから名前が分かればそれを使って何かしらの事をするんでしょうから、下手に分かりづらいより、分かりやすい方がいい。
「 ほら、飲み干したらゆっくりしていいですよ 」
「 ママ…… 」
母親でも飼い主でもない、そう言いたいですが世話役になった時点で、飼い主ではありそうな気がするので否定は止めた。
空になった容器をゴミ箱に捨て、妃翠の頭を膝へと置くように誘導すれば、素直に膝へと頭を乗せ、目を閉じる。
御さん相手によく頑張ったと褒めたいほどに、力を使ったと思う。
「 なになに〜。イチャイチャしてるの?俺も混ぜてー 」
「 気持ち悪いことを言わないで下さい。後、貴方のせいで疲れて寝てるんですよ 」
「 へぇーそうなんだ。可愛いから1年生達に見せてあげよ 」
急に現れては写真を連写する様子に、溜息を吐く。
「 呪霊だから、写るわけないじゃないですか… 」
「 それが…写ってるよ? 」
「 は? 」