第3章 金髪はママ説
呪霊を守り、匿う事は、規則に反し。
私自身が処分されても可笑しくはない事だが…
どんなに五条さんが攻撃しても、本気で反撃する様子は見えず、何度も私を守る動作をする事に胸が痛む。
「 ギィ…… 」
転がった身体を起こす力すら無くなり、それでも起き上がろうとする翡翠色の蛾は、身体を引き摺って尚、私の元に来ようとする。
反転術式を使う力もなく、頭から血を流し、足元へと来た蛾の身体は、光に包まれ消えれば、その姿は少女へと戻った。
「 あら、戦闘不能?残念、でも直ぐにとどめを刺して…… 」
「 もう…十分では無いですか。試したかっただけでしょう。人間に危害を加えるか見る為に… 」
私は、ママではないけれど…
幼い身体で、何度も私を守った呪霊を放置出来るほど感情に蓋をした訳では無い。
少女の頭に触れ何度か撫でてから、そっと身体を抱き上げる。
首へと抱き着く力も無く、垂れ下がった腕に力は入らず、意識もない事に酷く腹が立つ。
「 七海、俺は本気だよ。特級呪霊が人に危害を加えない保証はない。その呪霊はまだ生まれたばかりだから君を親だと思うかも知れないが… 」
「 もし、この呪霊が人を殺すような事があれば、その時は私がトドメを刺して、私自身も命を絶って差し上げますよ。呪霊が如何なろうと知ったことではないですが…この呪霊だけは、世話して上げたいと思ったんですよ 」
意識を取り戻した呪霊は、薄っすらと睫毛を揺らし、私の顔を見れば嬉しそうに微笑み、軽く胸元へと頭をすり寄せてきた。
如何思われようが構わないと思ってしまうほど、興味が湧いたのは初めてかも知れませんね。
そっと髪に頬を擦り寄せ、五条さんへと背中を向ける。
「 では、失礼します 」
「 あー…七海が首輪を付けて世話するって言うなら、俺は上に呪霊が死んだ事にして報告するけど、ちゃんとパンツは履かせなよ?後、名前も付けてあげてさ 」
「 言われなくてもそうしますよ 」
名前…ちゃんと考えましょうかね。
「 嗚呼、1年生の方々。また気が向いたら遊んであげてください 」
「 しゃけ! 」
「 お、おう!また連れてきてなー 」
「 一緒に遊ぼう! 」
彼等からいい返事が聞ければ、家入さんの元へと向かった。