第3章 金髪はママ説
「 へぇ、殺していいんだ。じゃー殺すよ。君達は下がっててね。危ないから 」
その場で脚を広げ、準備運動のように身体を動かした五条さんは、何か言いたげな1年生達に手出しをしないよう一言、下がることを伝えれば、彼等は其々に眉を寄せた。
ついさっきまで遊んでいた少女が特級呪霊だと知れば、恐ろしさもあるでしょう。
そして、遊ばせる事を望んだ私にも何か言いたそうですが…それは後々聞きましょうか。
「 行くよ… 」
「 !! 」
瞬時に移動した五条さんは、少女の横へと現れれば姿形が如何あれ、容赦無く顔に向け回し蹴りを向けた。
反応速度が遅れた少女の身体は吹っ飛び、砂の上に転がる。
「 ほら、どうしたの?反撃しなきゃ本気で死ぬよ? 」
態勢を整える前に、少女の腹を蹴って別の方へと飛ばし、与えた服は砂を被り、体中に擦り傷が出来る。
「 猫被りするのはいいけど、君が特級呪霊だってことは知ってんだよ。ほら、反撃しろよ。呪霊 」
「 ッ…がはっ……!! 」
もし、これが普通の少女なら、彼は虐待してるってことで警察沙汰でしょうが…
相手は少女の姿をしただけの、特級呪霊。
人ならざる者だからこそ、容赦が無い。
「 っ…見てられねぇよ 」
「 見た目は少女だからなぁ…。呪霊みたいな気配もないし…言われなきゃ気づかねぇよ 」
「 しゃけ…… 」
彼等からすれば、少女がボロボロになっていくだけの様子に見えるだろう。
それも、教師である五条さんによってだ。
けれど彼は、1年生達の様子を気に求めず地面に伏した少女の頭を踏み付ける。
「 どうした?何故、反撃しない? 」
「 マ…マ…… 」
「 嗚呼…もしかして… 」
五条さんはある事に気付いたらしく、
少女の上から消えれば、瞬時に私の前へとやって来た。
流石に特級呪術師である彼の攻撃は避け切れないと察すれば、地面に伏していた少女は声を上げた。
「 ママァァァァアア!!! 」
其れまで殺意なんて何一つ向けなかった少女は、五条さんの攻撃対象へと変わった事に気付いた途端、隠していた呪力を放出させた。
「「 !!! 」」
身体が重くなる程の呪力に1年生達もまた驚けば、五条さんは口角を上げた。
「 蜘蛛の糸?けど、俺には通用しないよ 」