第2章 紛い物の鬼
一ヶ月前、千鶴の父であり、私を引き取ってくれた恩人でもある綱道さんが消息を絶った。
最初は気の所為だと思ったが、十日経ち、二十日経ち、これはおかしいと私達二人は綱道さんを捜すことにした。
江戸の診療所も閉め、道中は追い剥ぎや山賊に出会ったりもしたが、なんとかこの京の都まで辿り着いたのだ。
だが、本番はここから。
綱道さんの行方を聞いて回らねばならない。
京の都は広いし人も多いしで大変だが、ここで諦めれば、綱道さんは永遠に行方知れずのままだろう。
だが。
「うぅうぅぅ〜」
「疲れちゃったね……」
一日中歩き回り聞きまくったにも関わらず、手がかりは何一つ見つからなかった。
「そろそろ、今夜の泊まるところを探そうか」
「お姉ちゃん、もう少しだけ聞き回ってもいい?」
「……いいけど、無理は体に禁物だよ?」
念のため、千鶴に釘を刺す。
うん、と頷いたのを確認して、再び歩き出そうとしたその瞬間。
____いい刀ぁもってんじゃねえか、そこの小僧共!
____俺らが国の為に使ってやる、寄越せ!
想定外の、最悪な展開。
千鶴と目を合わせて頷きあい、そして。
「な″っ…………、待ちやがれ!」
くるりと背を向けて走り出した。