第3章 新選組
迫る刀に、死を覚悟したその時だった。
何とも形容し難い音が、化け物の心臓の辺りから聞こえ、
そして目に入る、月光を浴びて美しく、妖しく輝く刃。
「君、大丈夫?」
倒れるソレの後ろには、翠の目を悪戯小僧のように光らせる男がいた。
戸惑ったが、その男が化け物と同じ羽織を纏っているのに気付き、問いかける。
「お仲間を斬っちゃっていいのかしら?」
「君には関係ない。……ちょっと来てもらえる?」
一瞬、男の目が鋭く光った。
だが、その程度で怯んでは牙斬の名折れだ。
口角を吊り上げて、懐剣を両手で構える。
「地獄に誘ってるならお断りさせていただくわ」
「それ以上にひどいかもよ?」
「尚更嫌ね。そこを退いて」
「…………本当面白いね、君」
暫し沈黙が降り。
月が雲に隠れ、辺りが暗くなった瞬間、お互いに飛びかかる。
相手の力を利用して体を反転させ、路地裏を飛び出した。