第1章 思い出
『おーい、何やってんだよ、!』
『そんな辛気臭い顔してたら幸せが逃げてくぞ!』
『……幸せいらねぇって何だよ、それ。幸せか不幸せかっつったら幸せだろ!?』
『じゃあ、俺がお前を幸せにしてやる!』
いつも笑って、こっそり私を外に連れ出してくれたあなたは、今どこに居るの……?
「…………お姉ちゃん、大丈夫?」
私は、千鶴の声でハッと我に返った。顔を上げれば、心配そうな千鶴と目が合う。
どうやら、考え事をしすぎて立ち止まっていたらしい。
「さっきからぼーっとしてたけど」
「……昔、この辺りに一度来たことがあったんだ、私。だからちょっと思い出してた」
そう言うと、なぜか笑う千鶴。解せぬ。
そんな私の訝しげな視線に気付いたのか、千鶴は笑顔のまま言った。
「なんだか、おばあさんみたい」
……悪気はないのだろうが、腹が立つ。
そりゃわたしゃあなたより四つも年上だけどもそれはないだろう千鶴ちゃんよ。
「お姉ちゃん、眉間にシワよっちゃってるよ?」
「千鶴のせいだし」
「え……」
訳がわかりませんって顔。かわいいな千鶴こんにゃろうよし先程の発言は聞かなかった事にする。
「もういいよ、早く行こう」
そう言って、私は千鶴の手を取り歩き出した。