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Black・Rose

第1章 Sign a contract


明智さんの手を引いて、なんとか人ごみから抜け出した。

『凄い人でしたね。お怪我はありませんか?』
「大丈夫大丈夫。満員電車には慣れてるし」
『庇っていただいてありがとうございます。私はこっちの方面ですが、明智さんはどちらですか?』
「僕も同じ方向だよ」

流石に新宿駅に着いたら解散だと思っていたけど、どうやら解散はもう少し先のようだ。

「まさか此処からも同じ方向とは思ってなかったよ」
『そ、そうですね』
「じゃあ行こうか」

心なしかウキウキしているように見える探偵王子を横目に、私も自宅へ向かって歩き出した。

「そういえば、高校に入ってからやりたい事は決まった?」
『いえ、具体的にはまだ決まってません。色々見てから決めたいと思います』
「そうだね。部活も高校でしか出来ないものもあるし、ゆっくり考えても良いと思うよ」
『明智さんは…部活には入ってはいらっしゃいませんよね』
「うん、勉強やテレビの仕事もあるし、部活にとれる時間がないんだ」

確かにテレビに雑誌に引っ張りだこな様だし、そんな時間もなさそうだ。

『忙しそうですね』
「確かに、少し大変かな。でも学生の本分は勉強だから、見失わない程度に受ける様にしてるよ」
『体調には呉々も気を付けて下さいね』
「勿論。体調管理はしっかりしてるよ」
『余計なお世話でしたね』
「そんな事ないよ。心配してくれてありがとう」

少し隈が透けて見える顔で平気そうな顔をしている所を見ると、この人もすごく頑張っているんだなと他人事ながらに感心する。

「そういえば何となく一緒に歩いてるけど、天音ちゃんは方向はこっちで大丈夫?」
『ええ。私もこちらです』
「そっか」

流石に家まで一緒である事は無いだろうと思って歩いて行くが一向に別れる様子がない。

『あ、あの。明智さんも本当にこちらですか…?』
「う、うん。僕もここなんだけど」

タワーマンションの入り口を前に2人が並んだ。そんなまさかと思うと同時に冷や汗が止まらない。

『き、奇遇ですね…』
「そうだね」

急にニコニコ笑顔になる明智さんが少し怖い。マスコミに黙っていろよという圧を感じる。そんな事しなくてもわざわざ教えるなんて面倒な事はしない。何よりバレたら1番に疑われるのは私で間違いないだろう。1番怖いのは幽霊とかそう言った非科学的なものではなく人間なのだから。
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