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Black・Rose

第1章 Sign a contract


「とりあえず…行こうか」
『はい』

明智さんの後ろに続いてドアロックを解除する。見慣れている警備員さんに挨拶してエレベーターホールへ向かった。

「天音ちゃんは何階?」
『40階です…』
「分かった」

そう言ってエレベーターに乗り込み、明智さんは40階だけを押した。

『え、あの…明智さんは…』
「あ、僕も40階なんだ」
『そ、そうでしたか…』

40階は2部屋しかない。つまり実質お隣さんと言うわけだ。こんな偶然、あるはずないと考えて思い出すのは私の主。恐らくこの人がトリックスターの1人だろう。破滅させるべきか、そうでないかはまだよく分からない。

「何か考え事?」
『…いえ。それでは私はこちらですので』
「ねえ、良ければ明日一緒に駅まで行こうよ」
『へっ』

恐らく私の監視だろうなと思う。変に勘付かれると厄介だから大人しく従っておこう。

「ダメかな?」
『いえ、大丈夫です…。多分』
「じゃあ、連絡先交換しておこうよ」
『は、はい…』
「明日、ロビーに7時半集合で」

慣れた手つきで連絡先を交換され、最後にきっちり時間まで指定されて廊下を歩いていった。私も慌てて部屋に入り、玄関で大きく溜息を吐いた。

『初日から何だって言うの…』

ローファーを脱いでそのまま寝室のベッドへダイブ。しかしこのまま寝てしまっては制服が皺になってしまうとなんとか身体を起こした。制服を脱ぎ捨て、部屋着に身を包み、ブラウスは洗濯機へ。まだ昼下がりでぽかぽかと春の陽気が降り注いでいて、微睡みそうになる。

そういえばパレスの探索もしなくては、と携帯を見た。禍々しい目玉のイラストのアプリを起動させる。何故かブックマークに秀尽学園、鴨志田、などよく分からない単語がブックマークされている。此処を探せということだろう。明日にでも行ってみるか。

『面倒になってきました…』

暫くぐったりとしていると、いきなり携帯が鳴った。明智さんからメッセージが届いている。

【届いてるかな?】

そういえばチャットの方も交換したのだった。

【はい、届いていますよ】
【隣の部屋にいるのに、変な感じだね。それじゃあまた明日】
【はい、また明日】

厄介そうな人に目をつけられてしまったらしい。主は今頃、あの空間でケタケタ笑っておられるのだろうか。勿体ぶらずに教えて欲しいものだと呆れながら溜息を吐いた。
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