第2章 Destroy the castle of lust
「契約成立だ」
「ええ。何かあれば私に連絡…と言っても連絡手段がありませんね」
「お前の学校は?」
「私は恍星高校の一年生です」
「分かった。ワガハイが迎えに行こう」
「助かります」
連絡の取り合い方も決まったところで解散だ。黒猫はまだ何かやりたいことがあったのか、また蒼山一丁目の方へ歩いて行ってしまった。
「あれ、もう着いてたんだ」
「ひ…」
「驚かせちゃったかな、ごめんね」
これから渋谷に着いたと連絡しようと思っていたら、急に声をかけられて驚いてしまった。
「い、いえ。丁度メッセージを送ろうと思ってて」
「そうだったんだ。なんかごめんね」
「いえ…別に気になさらなくて大丈夫ですから」
「それじゃあ行こうか」
「はい」
明智さんの若干斜め後ろを歩いて駅へと入った。東京は人が多くて人混みにすぐ酔ってしまう。
「そういえば…」
「なに?」
「どうして私を誘うんですか?色々目を付けられて厄介になると思うのですが…」
「そう、そのことについて少し話したかったんだ」
「はあ」
「この後時間はある?もし良ければ、君の部屋か僕の部屋で話をしたいんだけど」
「分かりました」
何か積もる話でもあるご様子。しかも私以外には余程聞かれたくないと思える。このご時世、どこからプライバシーを引っこ抜かれるか分からないからだろうけど、余計に面倒になりそうだ。
「今日は楽しかった?」
「ええ。友人と楽しんできました。明智さんは収録、でしたか」
「うん。そうなんだ。生放送だったから失言は出来ないし緊張するね」
場数踏んでそうな人でも、やはり緊張するものなんだろうか。テレビなんて出たことないから分からないけれど。
「あなたも、緊張ってするものなんですね」
「心外だなぁ…僕を何だと思ってるの」
「やんごとなきお人かと」
「そんなわけないでしょ」
若干呆れながら彼が行った。同じ電車に揺られながら目的地に着くのを待つ。
「ふふ、冗談です」
「あ、笑った」
「え?」
「笑ってるところ、初めてちゃんと見たなって」
「そ、そうですか」
確かに、人前で笑ったことはあまりなかったかも、愛想笑いはよくやるけど、あれは口元がとても疲れる。
「あ、着いたね。行こうか」
「はい」
なんか笑っている所を見られたのが恥ずかしくて、顔を隠した。
「どうしたの?」
「い、いえ。早く行きましょう」