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Black・Rose

第1章 Sign a contract


「ふふ、君がそう言うならそう思うことにするよ」
『その様に言われても、私はただの一般人ですから…』
「冗談だよ。でも大人びていたり、所作が綺麗だなって思ったのは本当」
『ありがとうございます』

そう言った所でお互いの料理が到着する。デザートだけは後に注文していたので、ハンバーグと飲み物が運ばれてきた。

「お腹空いてたんだ。やっと食べられるよ」
『では、いただきます』

ハンバーグをザクザクと切って食べていく。いちごミルクも適度に飲みながら、自分へのご褒美を楽しんだ。

「美味しそうに食べるね」
『自分ではこう美味しくは作れないものですから』
「へぇ…じゃあ自炊してるんだ」
『ええ』

そのままハンバーグを平らげ、あとはデザートを店員に頼んだ。探偵王子はどうやら腹を満たすために食事をしている様子。あまり味にこだわっていないように思える。

「ご馳走様」

私より一足先に食べ終えた彼は、席を立つこともなく私の食べる姿を見つめていた。

『お会計、されないんですか?』
「君が面白いからもう少し待ってようかなって」
『はぁ…つまらないとは思いますが…』
「良いよ。そのまま食べてて」

そう言うと彼は席を立ってレジカウンターへと向かっていった。何故か自分の分の伝票も無くなってしまっている。

「あ、食べ終わった?」
『あの、すみません。私が食べた分今払います』
「良いよ。良い食べっぷり見せて貰ったお礼。それに君と話すの楽しかったしね…」
『そういうわけには…』
「気にしないで」

お金を渡そうにも頑なに突っ返してくるものだから困ってしまった。ただ相席しただけなのに、払ってもらうのは本当に申し訳ない。

『ご、ご馳走様でした』
「君はこれから帰るところ?」
『ええ。その予定です』
「じゃあ駅まで送るよ」
『お仕事の合間とお聞きしましたが、宜しかったのですか?』
「さっき急に連絡が来て、今日の予定はもう無くなっちゃったんだ」
『そうでしたか。では駅まで行きましょうか』
「うん」

普通の高校生だと思って接していたが、思い返してみればこの人は有名人だった事を思い出した。週刊誌とかにすっぱ抜かれない事を祈るばかりだ。

『先程お礼も言わずにすみません。改めて、お食事代ありがとうございました』
「大丈夫。君は律儀だね」
『お金に関する事はきちんとしろと教えて頂きましたから』
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