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Black・Rose

第1章 Sign a contract


『Jクラスか…』

とてつもない数の名前が書かれたクラス名簿を見て、なんとか自分の名前を発見した。自分のクラスは特進クラスで、昇降口から1番遠いらしい。歩くのは少し面倒だなと思いつつも、クラスの前へとやってきた。先生が教室の前へ立っていて、席を教えてくれているようだ。

「小鳥遊さんね。貴方は廊下から三列目の1番後ろよ」
『はい、ありがとうございます』

先生に言われた通りに進み、自分の席に座る。入学初日な事もあってか、誰も話している人はいなかった。暇潰しがてら、黒板の字を眺める。今日の日程と、先生からのメッセージがずらりと並んでいた。

「それでは、皆さん揃いましたね。今日はこれから入学式があって、その後教室に戻ってきてHRを行ってから解散となります。入学式では皆さんに大きな声で返事して貰うので、今時間もありますし練習しましょう」

よくあるイベントだ。声が小さい人も居れば元気な人も居て、早くも個性が出ている。全員、先生の及第点だったようで文句の一つもなく和やかな雰囲気が流れていた。

「それでは、体育館へ向かいましょう」

先生に着いていき体育館へ。正直あまり実感が湧かないし緊張もしない。クラスの人も見た限りでは尖った人も居ないみたいで雰囲気は良さそうだと胸を撫で下ろす。

「では皆さん入場してください」

先生が礼をした後に続いて入場する。体育館中に拍手が鳴り響いていた。着席をしてからは静かになって式が始まる。返事をしたり、話を聞くだけなのに結構な時間が過ぎていた。

「この後、どこか食べてく?」
「ハンバーグ食べたい!」

後ろで聞こえる親子の会話。羨ましいと思った事は何度もあった。私には父と母はいないから。身寄りも無く独りぼっちで生きてきた。この世界では未成年は父と母を亡くした場合、親戚に預けられるのが基本だが、そんな親戚もいない。だから特殊な方法で認知を歪めて、強いて言うならマスターイゴールが後見人という事になっている。

『帰りましょう』

特に行くあてもないし、でもどうせなら自分にご褒美でも上げてから帰ろうと思い至った。私だってファミレスで良いから何か食べてから帰りたい。丁度お腹が空く時間だし、家で何か料理を作るのも面倒な気分。今日くらいご褒美で外食しても良いだろうと自分に言い聞かせて、少し早足でファミレスへと向かう事に決めた。
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