第2章 Destroy the castle of lust
声が聞こえる。聞いたことがある声。もしかして…
『そう。貴方のもう一人の私。ここにいる人たちを助けたい?』
「勿論」
『いずれ裏切ることが決まっているのに?』
「構わない。裏切るかどうかを決めるのは私よ」
『気に入ったわ。その気高き心と美しさで沢山の男を虜にしましょ?恋多き女性ほど美しくなるわ』
「残念だけど、あなたほど浮気性の趣味はないの。でもその美しさ、私に分けて頂戴」
決められた運命にだって、抗う。いいえ、抗って見せる。たとえ、この命の支配権を誰かに握られていたとしても。
「この力は…!」
「まさか…」
視界に暗くふさがる仮面を引き剝がした。少しの痛みと、どろどろと真っ赤な血がぼたぼたと地面に零れ落ちていく。
「来なさい!アフロディーテ!」
力を感じる。まだまだ発芽すらしていなかった薔薇が一気に花開くかのよう。
「私も行けます!任せてください!」
「よし、行くぞ!」
「はい!」
背後で二人が待機し、私一人で大きな騎士の前に飛び出た。私の役目はいわゆるタンク兼デバッファーと言ったところ。敵の注意を惹きつけつつ、デバフと言える魅了でクラクラさせてあげること。
「あとはお願いします!」
「任せろ!」
後は不意打ちを狙ったくせ毛さんと猫さんでフィニッシュ。華麗なバトルだった。
「片付けた直後で申し訳ないですが、一応増援に備えてセーフルームへ急ぎましょう」
「そうだな。おい金髪!行くぞ」
「お、おう!」
敵に見つからないように隠れながらセーフルームへ到着。幸いあまり大きな音を立てなかったからか増援は防げた。しかし、あんなに大きな騎士がいなくなったのだから、その内異変には気づくだろう。
「口だけじゃなかったようだな」
「お役に立てて何よりです」
「助かった」
「いえ、お気になさらず…そういえば、皆さんのお名前を伺っておりませんでした。お聞かせ願えますか?」
「雨宮 蓮だ」
「俺は坂本 竜司な」
「ワガハイはモルガナだ」
「ありがとうございます。覚えました」
トリックスターの名前は特に。
「にしても凄いなお前、その恰好」
「え」
改めて見れば確かにものすごい服になっている。ミニ丈の薄いレモン色のドレスだ。袖も裾もヒラッヒラでパッと見た感じでは機能性の欠片もない。しかし戦闘や歩いている限りでは全く気にならないのだから不思議なものである。