第2章 Destroy the castle of lust
なんとなく嫌な予感がしつつも後ろを着いていった。若干だけどスパァンというどこか思い切りの良すぎる音が聞こえてくる。
「あ、あそこか⁉」
竜司さんが駆けていき、悪趣味な柵から見下ろしては怒りを露にする。
「ひどい…」
見ていられなかった。男子生徒と思われるバレー部員が騎士たちに何度も何度も叩かれて。きっと痣になっているんだろうなというくらいしか私には言えなかった。でも、なぜだろう。こんな理不尽な経験をどこかでしたような記憶があるのだ。
「あ…」
何かが脳裏によぎった。後ろに大切な存在がいて、私が身を挺してその大切な存在を守ろうとしている。黒くて禍々しい流れを私が必死に受け止めていた。
「大丈夫か⁉」
「あ、はい!問題ありません」
猫さんに気遣われて正気を取り戻した。今は私のことは後回しだ。
「どっから開けんだ、これ…?」
竜司さんが辺りを見回している中、おそらく被害者と思われるバレー部員が現れた。話を聞くに、逆らわなければ問題ないのだからそっとしておいてくれとのこと。教員という地位を上手く使っている証だ。
「連れて行く気ですか?」
「このままにしてられっかよ!」
私よりも先に猫が呆れた。まぁ、初めは誰でもこのシステムは分からないだろう。
「無駄ですよ。先程の人たちはこの世界ではシャドウと呼びます。つまり現実の彼らではないんです」
「あぁ…?」
「鴨志田さん、でしたっけ。その方がこのお城を建てたとします。そのお城を作ると同時に偽物のバレー部員も一緒に作り出したと思ってください。賢そうなくせ毛の彼の為にもう少し難しい言葉を使うとすれば、認知上の存在です」
「馬鹿でもわかる説明だな。まぁ助けても意味がねぇって事だよ」
「んだよそれ!」
「まぁ、ともかくずっとここにいては見つかってしまいます。一度セーフルームまで戻りませんか?」
「そうだな。戻ろう」
くせ毛の彼の同意のもとに、セーフルームの手前まで戻ってきた。
「待った」
「何かいますね…」
「さっきまでいなかっただろあんな奴…!」
「どうする?」
「迂回ルートはありませんね…ここを通り抜けなければセーフルームはおろか、出口にも辿り着けません」
「やるしかなさそうだな…」
ここでお荷物組として見ているだけはできない。何か、何かしなくては。
『そうね。あなたはいつでも焦っている』