第2章 Destroy the castle of lust
『ぬ、ぬいぐるみ…?』
「誰がぬいぐるみだ!」
『しゃ、喋った⁉︎』
「ワガハイはれっきとしたニンゲンだ!』
その見た目で人間はかなり無理がある様な気がする。
『は、はぁ…』
「オマエ、ここに来て姿が変わらないって事は、一般人か?」
『えっと…どういう事でしょうか』
「まぁ、知らなくても仕方ないか。何も知らない内に帰った方がいい。此処はキケンだ」
そんな事は承知で此処にきている。実際此処を探索するためにわざわざ電車を乗り継いで来たのだ。
『知ってます。分かってて此処に来ました』
「へぇ…オマエはこの世界の事を理解してるのか?」
『認知世界の事ですね。大凡は』
「成る程な。けど、お前、ペルソナは?」
『私が認知されてないから警戒されていない可能性は…』
「それは無いな。ワガハイも同じ様なものだが、実際姿が変わっている」
今のところ目の前の猫もどきが現実世界と違うという確証がないが、現実にこんな生物がいたらきっとネットで騒がれているだろうから実際違うのだろう。
『取り敢えず、中に入ってみていいですか?自分の身位は自分で守れるので、心配なく』
「…分かった。ワガハイが案内してやろう」
まさかこんなペルソナ使いがいるとは思わなかったが、最後のトリックスターではないと思う。私が見ればすぐ分かると言っていたし、90%くらいの確率で違う。
「正面入り口の左手にある通気口から入って、様子を見るぞ」
『はい』
言われた通りに通気口までよじ登って、城の中へと入った。中は中世ヨーロッパにありそうな造りで、ツートンのタイルが特徴的だ。歪んでいるからパレスが出来るのに、玄関だけ見ると造形美を感じてしまう。
「シャドウだ。気を付けろ」
『接触したら、ペルソナが出るでしょうか』
「やめておけ。もしもの時の為に、接触は最低限にした方がいい」
『それは、そうですけれど…』
何故私だけ姿が変わらないのか、分からない。アフロディーテとは契約したはず。
「なんだ?外が騒がしいな」
『誰か来たのでしょうか』
「なんか…聞き覚えある声だな」
『一度外に戻りましょうか』
「ああ」
もう一度よじ登って、入り口前へと戻る。通気口から飛び降りると2人の青年が立っていた。1人は金髪、もう1人は…。
『貴方は…』
間違いない。このくせっ毛で黒髪の青年が、最後のトリックスターだ。