第2章 Destroy the castle of lust
『いただきます』
揶揄われて少しこそばゆかったけど、料理が来てくれたおかげてそんな雰囲気が一気に崩れる。手を合わせてからサンドイッチを口に入れた。
『美味しい…』
「でしょ?」
私はスモークサーモンとクリームチーズの組み合わせが好きだから余計に嬉しかった。
『明智さんはよくこのお店に?』
「そうだね。テレビ局から近いから結構お世話になってるよ」
確かにこの近くには明智さんが良く出る番組を放送するテレビ局があったはずだ。
『なるほど。だからマスターと顔見知りだったのですね』
「結構来てるからね。普段はカウンターに座るからよく話すんだ」
『明智さんはお店の方と話したいタイプですか?』
「話すと割と面白い人とかいるのが分かるから好きなんだ」
『そうでしたか』
というより職業柄人から情報を仕入れるのが癖になっているのだろう。探偵と名乗っているくらいだから。
「天音ちゃんは静かに食事したいタイプかな?」
『そうですね。人と関わることにあまり慣れていないものですから、気兼ねなく一人で食事できる空間が好きです』
「基本は自炊って言ってたもんね」
『ええ。一人で行くのは少し心細くて。外食することは滅多にありません』
友達がいないから、誰かと一緒に飲食店なんて行ったことはないし、お洋服を買ったりとか、そういった経験が一つもない。
「じゃあこれから僕と一緒に色んなお店に行かない?」
『え?』
「一人じゃ心細いって言ってたし、僕もお店行くのは好きだけど女性とか多いお店とか入りにくいからさ」
『は、はあ』
明智さんの考えていることが読めない。監視したいのなら登校の時だけで十分だと思ったけど、休日も見張っていたいということだろうか。近づきたいのか、遠ざけたいのかよく分からない。
「どう?」
今のところ、変に断っても怪しまれるだけだろう。主のおかげで資金には困ってないし、マンション住みの時点で金欠が理由で断れない。
『ぜひ、ご一緒させてください』
「良かった。それじゃあ空いてる日を後で連絡するよ」
『はい。分かりました』
こういう時に断れるようにしないととは思いつつ、断ったら悪いと思ってしまう自分がいる。けど、おいしい食事にありつけるならいいかと自分を納得させた。
「実は天音ちゃんと行ってみたいなってお店見つけたんだ」
『どんなところなんですか?』