第2章 Destroy the castle of lust
可愛いという言葉に気付かないふりをして受け流した。本当は凄く照れ屋らしいので、意識してそう言った言葉を真に受けないようにしている。
「ちょっと照れてる?」
『そ、そんなことありません!気のせいです!』
照れないように頑張ったつもりだったのにどうやらバレてしまったみたいだ。
「思ったんだけど、天音ちゃんは割と照れ屋さんなんだね」
『そ、それは良く、言われますが…頑張って意識しないようにはしているんです…!』
「そのままで良いんじゃないかな。とっても可愛いし」
『か、揶揄わないでくださいよ…』
「あんまり面白いからつい」
『もう…』
「はい、クリームソーダとコーヒーだよ」
ナイスタイミングで運ばれてきた飲み物のおかげで何とかクールダウンすることができそうだ。
『ありがとうございます』
「ありがとう、マスター」
コースターの上に出されたクリームソーダに早速口を付けた。まずはアイスだけ先に食べてしまうのが私の食べ方。
「バニラアイスを先に食べる派なんだ」
『混ぜると溢れちゃうので』
「案外不器用だね」
『うっ…』
確かにそうかも。器用に食べようと思ってもガサツと大雑把成分が邪魔をして、結構食べ方が下手だったりする。もう少し上品に食べられる様になりたい。
『溢すよりはマシだと思うんです…!』
「あはは、そうだね」
先程の会話で味を占めたのか、見守るようにニコニコと私がちびちびとアイスを食べる姿を見つめている。
『そ、その微笑ましいって言わんばかりの顔やめませんか…』
「何のこと?」
『す、すっとぼけないで下さいよ…』
「ごめんごめん。だって少しだけメロンソーダを飲んでたら溢れる心配ないのになって」
『そ、そういえばそうですね…。頭にありませんでした…』
そう言うとまた親戚の子供を見守るような目で私を見るのだ。こそばゆくって仕方ない。
「昨日は大人びていて凄い子だなって思ったけど、案外可愛らしいところあるんだね」
『うぅ…』
完全に明智さんが一枚どころか三枚くらい上手だ。もっと上手に受け流せるようにならなくては。このままでは完全に明智さんのペースである。
「はい、ナポリタンとサンドイッチ」
ナイスタイミングなマスターのお陰で、やっと明智さんのニコニコ笑顔が終わった。こんな風に揶揄われると思っていなかったので凄く疲れたような気がする。