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Black・Rose

第2章 Destroy the castle of lust


私とて用事がなければ蒼山一丁目の方には行かない。インドア派なので出歩くことが好きではないからだ。

『友人と約束しているので…』
「そうなんだ。楽しんできてね」
『はい』
「という事は、九段下で乗り換えかな?」
『はい。そこでお昼を食べようと思って』
「じゃあ僕も一緒に行こうかな」

本当に監視の目を緩めたくないらしい。此処は粘り強く様子を見よう。

「おすすめのお店があるんだ。美味しいし、お財布にも丁度いい」
『昨日お支払いして頂いたので、今日は私の奢りです』
「僕がしたくてした事だから、気にしないで」

流石に払って貰ったままではこちらも嫌なのでこれで相殺させてほしい。

「九段下〜九段下です」
「行こうか」
『ええ』

明智さんに続き、私も電車を降りる。あまり見たことがない光景で若干狼狽えた。

「こっちだよ」

明智さんに腕を掴まれて、改札を出る。

「あ、ごめん、痛かったかな」
『いえ、大丈夫です』
「じゃあ、これで」

さりげなく手を握ってきた。凄い事をさらっとやられてしまい拍子抜けしてしまう。

『え、あ…』
「嫌だった?」
『い、いえ!』

どうしよう、何故だか分からないけど私もドキドキしてきた。落ち着こう、深呼吸だ。

「此処だよ」
『わぁ…良い雰囲気のお店ですね』
「たまに来るんだ」

レトロな雰囲気の喫茶店だ。明智さんは隠れ家的な所が好きなのだろうか。

「おや、明智くんじゃないか、そっちの子は…」
『小鳥遊天音と申します』
「僕の友達なんです」
「おやおや、そうだったのかい。ゆっくりして行ってくれ」

明智さんが座った席の向かい側に座った。迷いなく座ったことから、此処がお気に入りの席なのかもしれない。

『私はクリームソーダとスモークサーモンのサンドイッチで』
「僕はブレンドコーヒーとナポリタンで」

コーヒー飲めるんだ…とちょっと羨ましく思ってしまった自分がいる。私はまだコーヒーが苦手で、甘いものしか飲めないのだ。

「甘いものが好きなんだね。昨日もいちごミルク飲んでたし」
『明智さんのようにコーヒーも嗜めたら良かったのですが、まだ苦いものは苦手で…』
「そうだったんだ。大人っぽいからもう飲めそうだと思ってた」
『まだ子供舌なんです、私』
「案外可愛いところあるんだね」
『未熟なだけです。その内楽しめるようになれると良いのですが…』
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