第11章 4月26日 社外
いや、無い。
いやいや無いってこたないが。
今まで紀佳以外の女性をそういう主観的な目で見た事が無かった。
自分の青いのか赤いのか分からずに、顔に手をやろうとした。
「Craft、beer!!」
「ッ!? 冷て!」
「おっ……と! 危なっ」
その前にいきなり両頬に押し付けられた冷えた缶に怜治が反射的に引き、落としそうになったそれを小夜子が素早く手でキャッチする。
「……………何やってんだ」
「ふ。 高階くんビール党でしょ? これ美味いよ」
手渡された上着と共に二本の缶を見ると、ブルーの青地に見慣れないイラストが描いてあった。
流行りのご当地ビールってやつだろうか。
「律儀だな。 ありがと」
小さ目の毛布か、膝掛けらしきものを体に巻き付けた小夜子が自分を見上げていた。
おいおい、『近寄り難い美人』はどこ置いてきた。
今度は懐っこくて無邪気なバージョンとか止めてくれ。