第10章 4月26日 社内
「うん。 昼に色々と書いたけど、要は合意行動に時間取られる書き方しちゃ駄目」
「そんなつもり無いですけど」
「私もそうだと思う。 けど、そう取る人もいる。 例えばここ。 デメリットに関しての積極的な主張が足りてない」
「それ書いたら、更にデメリット増えるんで」
「書く前に、明確に範囲を決めなきゃ。 それは個人の考えとは切り離して。 主題に沿う客観的な枠を最初に作るの」
「……俺の考えじゃなく?」
「論理的な意味での範囲だよ。 勿論高階くんの」
「なるほど。 でも、窮屈な作業だな」
「クリエイティブな仕事だと思えばいい」
「創造というか、想像力ってとこか」
「アンビバレントな作業って楽しくない?」
「確かに」
小夜子がにっと微笑む。
やはり彼女はいい。
男性的でもあり女性的でもあり。
金子も俯瞰的な物の見方をするが、小夜子程じゃない。
だけどどこか彼女の様子がおかしいのを、最初見た時から感じていた。