第10章 4月26日 社内
18時も半分を過ぎた頃、早足に彼女がやってきた。
もう疎らになった課のフロア。
薄手のブラウスにストールを羽織り、遅くなってごめん、と開口一番小夜子が謝る。
怜治はそんな彼女をじっと見ていた。
「……どうかした?」
「いえ」
訝しげな表情をして小夜子が隣の空いたデスクから椅子を拝借し、怜治の横に運んできた。
何人か通り掛かる男性社員がこちらを盗み見る。
まあ、こんなの歩いてたら見るわな、普通。
近寄り難いタイプの美人。
家系なのか、そういや小夜子のあの叔父も大概だった。
「聞いてる?」
「はい」