第10章 4月26日 社内
「湊」
「あ、金子さん」
小夜子の苗字を呼びながらデスクに手を上げて近付いてきたのは同期の金子だった。
さっぱりした人柄でしばらく課が同じだった事もあり、同期の中でも二人は割と仲が良い。
「明日の会議、アジェンダ見といてくれた?」
「何で私が」
「いつも見てる癖に。 明日はうち主催なんだから他もチェックして欲しいなって」
「そんなの個人掲示板で送っといてくれれば」
「だって湊、高階の事推してたろ?」
「あ、そうそう。 なんで彼がこれに出る訳?」
小夜子が目で示したモニターのスケジュールに金子が仕様がないだろ、という風に肩をすくめる。
「深いとこ突っ込まれたら困るから。 設計自体ほぼあいつがやってたから」
「……成程ね」
「湊?」
「あまり期待しないで。 それとこれとは別なんだし」
「冷たいヤツだな。 部長や主査だって来るんだから、フォロー頼むよ」