第6章 4月12日 達郎の店
「で、何の冗談。 コレ」
「……………」
店を出た小夜子と怜治がオフィスに混ざる飲食街を抜け、住宅やマンションが続く夜道を歩いている。
割と急いで来てくれたのか、怜治は薄手のシャツだけで上着を着ていなかった。
あの時、随分と歳下の彼なんだね、そう言う達郎ににこやかに見送られる中。
事態が分からず最早無表情の怜治の腕を引っ張り、小夜子はとにかく早々に店から連れ出そうとした。
そんな小夜子の慌てように照れてるんだな、とても言いたげな呑気な達郎の表情だった。
「聞かないで。 謝るけど」
「別に。 あんたの彼氏なんて役得なんだろうし。 で、叔父さんだって、あれ? 随分男前…イケおじってのか」
「……………」
「まただんまりか」