第6章 4月12日 達郎の店
「……もしもし」
男の声。
「あ、……あの!」
「貸して」
「達…っ…」
「あ、いつもお世話になっております。 夜分遅く失礼致します。 湊小夜子の叔父です」
達郎は小夜子の手からとっととスマホを奪うと、事務的に事の概要と店までの道を説明し出した。
「……………」
達郎は小夜子の事となると過保護で若干強引な所がある。
彼のこういう所も相変わらずだ。
「ええ、大丈夫だとは思うんですけど、彼女がそう言うもので……はい、ありがとう。 ではお待ちしております」
すっかりと抵抗を諦めた小夜子がまたカウンターの椅子へと腰を下ろし、会話を終えた達郎は彼女の手にスマホを返した。
「15分位で来るって。 僕は片付けしてるから、そこで休んどいで」
「……ごめんなさい」
それは彼氏に言う事、達郎が微笑みを返しキッチンに移動して洗い物を始めた。