第6章 4月12日 達郎の店
すっぽりと彼女の肌を覆う手指が、くるぶし、ふくらはぎ、脛や膝と小夜子の脚の形を確かめて沿うように、動く。
「ん…」
心許なく達郎の手首を指で掴む自分。
私はどうしたというのだろう。
単純に恐怖心の方が勝って、それにも関わらず快楽を返す自分の体にも戸惑っている。
『ああ…お母さんが、いってしまう…』
玄関のドアが閉じられて、しばらく。
一見犯罪にも近い情事の影が午後の気怠い空気の中で、相変わらず密やかに忙しなく揺れていた。
見えない小夜子の心の攻防が続けられ、一方体は弱々しい抵抗よりもそれに応えかけている。
スカートの下の下着を冷たく感じていた。
小夜子の目からは涙が零れていた。
体を密着させている達郎。
汗ばみ熱くて、大きくて。
それはいつもの彼ではなく、別の生き物の様に思えた。