第6章 4月12日 達郎の店
「身内を心配するのが?」
達郎がそう言い終わらないうちにドアの開く音がし、新しい客が入ってきて二人の会話が中断された。
カウンターの離れた席に着く男性の二人連れの席へと達郎が接客に向かう。
小夜子に供されたのはカンパリにレモンが入って飲みやすくしたソーダ割。
もう5年以上も前だろうか。
達郎が店を開いて当時大学生だった小夜子が初めて飲んだものだ。
一応はレストランの体を装った店だが、営業は夕方から。
日替わりの少し凝ったメニューで少人数や会社帰りのシングルの客に好評らしく、夕食時には割と混む。
当然ながら達郎目当ての女性客も。