第6章 4月12日 達郎の店
「いらっしゃい。 あれ? 小夜ちゃん早いね」
明るい雰囲気の薄茶の戸を引き、小夜子はさっと店内を見渡した。
奥のテーブル席に食事に来ているらしきカップルが一組。
それとは反対側の、いつも自分の座るカウンターの隅へ向かう。
「んん、ちょっと。 達っちゃんこれ、あげる」
「何これ? 可愛い」
小夜子の叔父である湊達郎は、カウンターテーブルに置かれた花の小箱を手でつまむと目の前にかざした。
「会社の女の子からのプレゼント?」
「違うけど。 お店に飾ったら? お手洗いとか」
「ふうん。 そうだな」
「女の子が買いそうだよね。 そういうの」
「うん。 ファンシーショップとか、アジア系の雑貨屋とか?」
「……そうなんだよねえ」
あの子、一人っ子って聞いてた気がするんだけど。