第5章 4月5日とそれ以前 社内、ある居酒屋
昼休憩も終わりかけの時間帯に、小夜子が彼の部課の傍を通りがかった時、デスク周りに目を走らせた。
他の人間は出払っている様で辺りは閑散としている。
「もしかして高階くんって、SEにでもなりたかった?」
背後から声を掛けられた怜治が小夜子の方へと顔を向ける。
「……何でそう思うんです?」
「違うの?」
「いえ……」
何となく、煮え切らない反応だった。
パッと見の彼は知的ではあるが、引き締まった口元やスーツから覗く手や首の無骨さ、伸びた長い足。
上手くはいえないが男性なのに妙な色気のようなものを感じた。
周りが放っておかないのは何となく分かる気がした。
「その本、うちにはないOSのでしょ? あと、普通に仕事する分にはそんな風にDOMなんて見ない」
「詳しいんですね」
「あなた程じゃないけど」
「すみません。 あまり他の社員を知らなくて。 けど多分、湊さん……ですか?」