第32章 6月11日 湊のマンション
何度か左の胸にそうすると、次は右へ。
ショートパンツを履いた脚の先がシーツを擦る。
片手の指先だけで小夜子に触れ続ける。
たまに腿の辺りに爪で掠る様に触れると驚いたみたいに体を捻る。
小夜子の体が、自分の指一本でいちいち過剰に反応する様を見ていると、怜治の頭が愛情、興奮、充足感、嗜虐心、そんなもので満たされていく。
こんな自分が変だと言われればそうなのかもしれない。
「あっ……怜治…やだ、どこ?」
目隠しをされてるというのに小夜子が不安そうに辺りを見回そうとしている。
「ねえ、こんなの……ぁあッ」
あからさまにTシャツに盛り上がってきた乳首をごく軽く摘む。
そのまま震わせる様に動かすと小夜子が上体を反らして細く喘いだ。
「………いるよ、ちゃんと」
「やっ、ダメ……っあ」
「反応いい。 気持ちいい?」
「そん…」
こんなの、避けようと思えば簡単に避けられるのに。
「もう片方も、摘んで欲しい?」
「…………い、や。 やだ」
膝を擦り合わせて、もう腰まで動いている。
こんなに分かりやすく反応がいいというのに、まだ抑えようとしている。
体を開いて無理に快楽を引き出してやれば、小夜子はこないだみたいにそれに沿うんだろう。
けどいつもそんなのをやってたら、彼女がもたない。
そして怜治の方も、もっと小夜子と長く深く繋がりたいと思う。
詰まらない嫉妬心は脇へ置いて、怜治は小夜子の壁を取り除く作業に注力する事にした。