第32章 6月11日 湊のマンション
「っんむ」
衝動に任せ、多少手荒に唇を奪う。
頭上の手が何かを掴もうとするかの様に動き、拘束から逃れたがっているのが分かった。
「ダメだよ。 小夜」
舌を入れようとすると口を閉じ、こちらも抵抗している様子。
顎を上にあげ、彼女の唇や歯を舌で撫でていく。
そのせいで、小夜子が何かを言おうとするも言葉になっていなかった。
「…………」
呼吸が苦しくなったのか、小夜子の力が僅かに抜けた隙に怜治がぬる、と舌を差し込んだ。
「……ふッ………ん」
彷徨う舌を絡め、音を立てて小夜子の睡液を吸う。
歯茎や舌を扱き、蹂躙する様に彼女の口を味わう。
やがて弱々しく口内全体の力が抜け、同時に動いていた手が大人しくなった。
口を離すと、自分と小夜子自身の睡液で濡れた唇が震えていた。
「怖い?」
小夜子が頷く。
「俺でも?」
今度は反応が無い。
ややのちに、彼女が眉を寄せ小さく狡い、と呟いた。
Tシャツの薄生地から微かに膨らむ、おそらく胸の先端。
触れるか触れないかの力で指先を置いてみる。
「………ッあ」
ひくん、と上半身全体が慄く。
同じ力加減で、小さな円を描いている丸みに沿って触れていく。
一周したらまた乳首を撫で、その後すぐにまた乳房へと戻る。
既に小夜子の呼吸が荒い。
「い、や……こんな」
怜治は敢えて何も言わなかった。