第4章 4月12日 社内
ここのフロアの外は飲食街などのテナントが入った総合ビルのアーケードになっている。
そのせいで陽の光が入らず青白い灯りがいつも寒々しい。
「うん。 そう言えばあなたも去年はあの中に居たね、高階くん。 異動先のシステム管理課はどう? もう慣れた?」
自分でも今更と思いつつ相槌を打ち、小夜子はデスクのすぐ脇に立っている彼の目を真っ直ぐに見る事が出来ずにいた。
「……………」
彼からの返事は無い。
ただ視線だけを感じて、小夜子の手元が強ばる。
「……何の用?」
不自然な間の後に、怜治は小夜子の側に腰をかがめて体を寄せ、彼女が反射的に勢いよく席を立ってそれを避けた。
「ソフトの入替え、申請してましたよね。 作業に来たんです」
仕事用なのか、眼鏡をかけた怜治が淡々と説明し小夜子のデスク上のPCに手を伸ばす。
突然立ち上がってしまい所在の無くなった小夜子は傾きかけた椅子の背を押さえたまま、複雑な表情でそれを見守る。