第32章 6月11日 湊のマンション
「何真剣な顔して女性用のファッション雑誌なんか読んでるの?」
風呂上がりの小夜子がそう声をかけ、その時何となく怜治が手にしていた雑誌を覗き込んでくる。
オフィスコーディネート10選、との見出しが書いてあった。
「……女って大変なんだなって」
「まあ、男性みたいに同じスーツ着てればいいってもんじゃないし、今の時期はクールビズでジャケットさえ要らないから。 もう少し飲む?」
差し出してきたチューハイの缶を一旦受け取ったが、思い直して小夜子の腕を取る。
「小夜子の方がいい」
「でも、まだ髪乾か」
して…ない、合間に抗う彼女に軽い口付けを繰り返す。
シャンプーやボディソープの清潔な香りが怜治の鼻腔を通り過ぎる。
柔らかで少し湿った唇を食み、顎、首筋、耳の後ろの髪の生え際へと移動する。
一週間ぶりの小夜子の体。
部屋着らしい、大き目のTシャツから彼女の曲線が伝わってきて、それと微かな震え。
「怜治に、触られると、体…変」
困って怯えた様な小夜子の声。
そんな反応をするから、急く自分にストップがかかる。
彼女に触れられない平日に、以前の様に頭の中で小夜子を抱いた。
優しく壊れ物の様に扱う日も、愛撫も無しに犯す日も。