第32章 6月11日 湊のマンション
初めて小夜子のマンションの部屋に通され、辺りを見回して怜治は彼女らしいと思った。
男みたいに殺風景とは言わないまでも、整然としていて余り無駄なものがない。
取り敢えずシャワー浴びてくるから、寛いでて。
帰りのコンビニで軽いアルコールや飲み物等を購入し、それらをテーブルに並べた後に小夜子はバスルームへと向かった。
キッチンとリビング、寝室らしき部屋の2DKの間取り。
一人暮らしならこれ位が丁度いいんだが、家賃とかはいくら位のものなんだろう。
そんな事を考えながら本棚を眺める。
様々なビジネス書や料理等の実用書が7割、洋書、ファッション雑誌、画集等など。
小夜子は自分と逆で、広く知識を求めるタイプらしい。
「全国秘湯巡りって……何だこれ」
笑いそうになりながらフルカラーの雑誌を手に取ってめくる。
彼女は温泉とかが、好きなんだろうか。
そのうち一緒に旅行行ったり、そんな事を色々考えると顔がにやける。
海もいいけど、小夜子の水着姿なんて危なすぎて他の男に見せたくない。
ただでさえ、会社や達郎の店なんかで小夜子をちらちら見てくる野郎が後を絶たないってのに。
自分は外見から入った訳じゃないが、ああいうタイプの彼女を持つとそういう意味では苦労する。
達郎レベルの男なら、自分よりは少しはましなんだろうか。
武井曰く上の下と評された顔の造作云々は置いといて。
「筋トレの回数でも増やすかな……」
元々運動部に所属していた自分は体を動かすのは嫌いじゃない。