第31章 6月11日 達郎の店
彼にとっての等価。
私の思っている等価とは少し違う。
けれど、得難いものだという認識は同じ。
それは随分と長い間、私が求めていた宝石の様なものだ。
ふと、達郎との先ほどの会話が脳裏に浮かんだ。
『 彼に甘えてごらん 』
……甘えるって、どうするんだろう?
性差抜きにするんなら、仕事を手伝ってもらうとか?
愚痴を聞いてもらうとか。
違う様な気がする。
そもそも愚痴なんて無いし。
達っちゃんに今度、具体的に聞いてみよう。
「小夜、どうかした?」
「んん、あ、あの」
よく分からない。
分からないけど。
「今晩は、少しだけ……甘えてもいい?」
ぎこちなくそう言うと、怜治が目を見開いた。
「具合でも悪い?」
「……………」
達っちゃんの、嘘つき。
小夜子が再び真っ赤になって俯き、怜治のくぐもった笑い声が耳に届いた。
「そんなに笑う事………」
「悪い。 発言が、小夜らしくなくって、驚いた」
だよね。
そこは100パーセント同意する。