第31章 6月11日 達郎の店
「なんか楽しそうだったけど、良かった?」
「うん、大丈夫。 お疲れ様」
「顔赤いし…………」
「え? そう?」
怜治がじっと見てくるので、そこまでかと両頬を手で挟んで冷まそうとする。
「髪上げてるの、それ、いい。 色っぽい」
「そ、う? ありがと……」
そんな事を言われて小夜子が余計に赤くなり、そのまま手を下ろせなくなってしまった。
「武井のとか見ても、何とも思わなかったんだけどな」
「なんで武井さん?」
「こっちの話」
「ああ、そう。 金子くんが心配してた。 ログの事」
「ん? 何でまた」
「武井さんに無駄な仕事させて、彼女が嫌な気分になるんじゃないかって?」
「んな訳ない。 さっき家のPCにメール入ってたわ」
「何て?」
「俺が作ったやつ。『 解析用のソース見辛いので修正しときました、あと履歴位ちゃんと残しとくのは常識ですよ 』って、怒られた」
「ホント? 彼女らしい」
小夜子が思わずぷっと吹き出した。
もうそこまで出来るなら、自分でも色々勉強しているんだろう。
「実際、呑み込み早えしな。 ちょっとこっちも最近教えんの楽しくなってきた」
「そうなの」