第30章 6月11日 社内屋外
「あれさ、今、武井の教育任してんだろ? うちで定常業務のログのチェックとかあったの覚えてる?」
「うん、覚えてる。 私も昔してたから。 それがどうかした?」
「今日高階が早々に帰ろうとしたから、ちゃんと武井の事見てやってんのかって聞いたんだけど。 そうしたら奴、なんて言ったと思う? 問題があれば元々社内アドレスに一旦ログだけ吐いて、個人携帯にアラート出る様にしてるから、って」
「それで?」
「それでって……何か違うだろ? そういうの」
「武井さんの事、信頼してるって事じゃないの? 少し一緒に仕事したけど、確かに彼女は優秀だと思う」
「そういう意味じゃなく、チームとしての連携の話だろ。 武井にしても、自分の作業が実は徒労だなんて、可哀想だろ? その前に、そんな仕様に変えたって共有が無いのもどうかと思うぜ」
「それで、高階くんに注意したの?」
「………いや」
金子が目線を下げ、半分近く残っていたビールを一気に飲み干す。
「何ら問題無い。 情報漏洩云々のルール違反も無い。 例えそれが無くってもうちは普通に回る。 単に奴は要領が良いだけだ。 ただ、俺が勝手に心配してるだけだ」
「彼が金子くんの課で良かった」
「え?」