第30章 6月11日 社内屋外
その後も、他部署に顔を出しては作業を手伝い、職員の話に耳を傾けた。
屋外の灯りが灯り始め、常設のイルミネーションが広場を飾る。
「金子くん、こんな時間まで大丈夫なの?」
「湊」
「お子さんの事とか」
焼き鳥の串を手に持って、ぼんやりしている様子の金子が階段に腰を掛けていた。
ウーロン茶のカップを片手に、小夜子が金子の隣にしゃがんだ。
「うちのは今月一杯里帰りだからさ。 その前よりはむしろ楽」
「楽って、ね……」
奥さんが大変な思いしてるってのに、呑気な。
「な、なんだよ。 分かってるよ。 怖い顔すんなよ。 束の間の息抜きって意味だよ」
「……なら、いいけど。 楽しみだね」
「うーん。 楽しみな様な、怖い様な」
「そうなの?」
「変化って、そんなもんだろ。 なんだって」
「確かに」
小夜子がこくんとお茶を一口口にする。
時間が早いのもあるが、この後のスケジュールを考えると今酔いたい気分ではない。
「考えてたのはそうじゃなくって、高階」
「彼がどうかした?」