第30章 6月11日 社内屋外
「そう言えば、今週の社内報。 あれは小泉さんが?」
「ああ、よく分かったね。 硬っ苦しいのは前々から嫌だと思ってたのよね。 そういうとこ、あるでしょ。 未だにうちって」
「小泉さんの所も、社内恋愛ですしね」
「そういう事」
もう少ししたら、色々相談に乗ってもらったり、する事もあるんだろうか。
だけどプライベートのそんなのって、どうなんだろう。
仕事と恋愛をきっちりと区切りを付けている小夜子は躊躇う。
同じ女性で社内でも稀有な存在である彼女は、そんな意味でも自分に無いものを持っている、尊敬の対象だった。
「うちの夫が言うには、こういうのは外堀埋めるよりも内側固めた方がむしろ早いって。 まあ、高階くん使わせてもらったのは、取り敢えずのカムフラージュ」
「……………」
「さ、せっかくのデートに服が油っぽくなったら台無し。 ここはもういいから、早く行きなさい」
手に持っていたキャベツを小泉に取り上げられて、小夜子が赤くなった。
私、なんかこの人たちに言ったっけ?
小泉に半ば追い立てられる様にして、小夜子はその場を後にする。