第30章 6月11日 社内屋外
「良ければお手伝いしますよ」
「大丈夫! じきに残業上がりの子も来るし」
男女の別があまりない、という社内でも課長から上のポストは未だに男性が多い。
小泉はその数少ない女性の一人だった。
エネルギッシュで明るいそのキャラクターで部を支えている。
「湊さんも食べてく?」
「ありがとうございます。 ですがこの後少し私用が入っていて。 じゃ、他の方が来るまで手伝いますね……小泉さんこそお家の方、大丈夫なんですか」
小夜子が調理スペースに入っていき、手を洗ってから小泉の脇に積まれている野菜等の補充を始めた。
「平気よ。 こういう時はうちの夫が家の事をするって決めてるの。 定時にダッシュで帰ったわ」
「事業部長らしいですね」
「私がこういうイベントに目が無いっての分かってるし、諦めてんのね」
彼女の夫はいつも小夜子が世話になっている事業部長でもある。
確か、育ち盛りのお子さんもいる。
二人共、そんな事はおくびにも出さないが、色々な苦労があるのだろうに。
いつ見ても、素敵なご夫婦だと思う。