第30章 6月11日 社内屋外
屋外に並んだいくつかの簡易的なテナント。
まだ外は明るく、ビル内のフリースペースには人が集まり始めていた。
慰労会には職員が主立って実行委員として飲食を提供するが、いつの間にか会社内だけではなく、オフィスビルにあるコンビニ、カレー店、居酒屋、その他の飲食店も混ざって商売を始める様になった。
出席する社員には福利厚生として、予めいくらかの飲食用のチケットが配布されるというシステム。
お祭りの屋台よろしく、ドーナツ、焼きそば、たこ焼き、おでん、ビール、そんな文字が看板やボードに書いてある。
銘々が紙皿やカップを持ち、円状の石段や植木の傍らに腰を掛け、陽の下で楽しげに談笑する様は学生時代の文化祭の類いを思い出す。
「小泉さん、大丈夫ですか」
「湊さん。 いやあ、困ったわ。 今日はうちの要員足んなくってね」
困った、と言いつつも楽しげに鉄板の上の具材をひっくり返しているのは広報課が属する営業部の小泉部長補佐。