第29章 6月6日 ホテルのバスルーム
怜治がシャワーを強めに捻る。
ザァッという音と一緒に湯気が立ちのぼり視界が薄くなって、急に前へ押し出された。
「…………っン!」
先ほどのように、ぶつかり合う音。
怜治が本格的に腰を使い始めて、小夜子の視界が弾けた。
「やぁ…んんッ、ぁあ!」
強い振動が小夜子とその内部を揺らす。
同時に激しく擦り上げられる。
泣き声に似てる。
そう錯覚しそうになるが、その中に快楽、僅かな媚びを含んだ小夜子の声を怜治が聞き分けた。
「……いいよ。 もっと乱れて」
「ぁあッ好……き」
「ここにされるのが?」
「ゃ…違」
ぽたぽたと、小夜子の脚を伝い透明な液体が溢れた。
それを気にする前にまた突かれる。
それと混ざり、粘度の異なるぐちゅぐちゅとした音。
翻弄され、狂いそうになるのに小夜子は怯えた。
「んぁッ………も、許し…… 」
俺だけに見せてくれたらいい、そんな彼の言葉が浮かんだので、指を噛んで踏み止まる。
バスタブに張った湯はもう半分程しか無く、それでも小規模な波を作り飛沫が絶え間なく二人の体を濡らした。
「まだ……足んない。 小夜、もっと」
熱に浮かされた様な声で囁かれ、怜治は満足してないのだと思った。
けれど、どうしたらいい?
足りないならあげたい。
焼かれる体が、考えようとする脳も溶かす。
深く激しい挿入で、こんな強烈な快感だけを得るのは初めてだった。