第29章 6月6日 ホテルのバスルーム
「……あ」
「全部綺麗に洗っとかないと」
細かな湯に胸を叩かれ思わず息を吐く。
薄い水の膜ごしに、彼が小夜子の肌を撫でていく。
私の胸じゃ余る位の大きな手。
なのにこんなに優しく触れてくる。
私だって、こんなの慣れてない。
喉の奥がツンとした。
私って、優しくされると泣きたくなるんだろうか?
「あ、きゃ!」
背中から、腰の辺りにあった手がお尻の間に滑って、思わず小夜子が体を捻った。
「そこ、駄目」
「何で? もう知ってる」
「………あの時、は」
「うん。 無茶してゴメン。 だから優しくする」
「そういう問題じゃ……ん、やだ」
膣口からそこに続くお尻の周り。
指で柔らかく撫でていく。
恥ずかしい様な、むずむずする様な。
「ここもそのうちいい?」
「え……っ」
「小夜の初めてのなら欲しいだろ? 普通」
普通じゃ無い、多分。
「だ……ダメ」
というより、物理的に無理だと思う。
でもそんなに色々と、紀佳さんとはしてたのだろうか?
ちらとそんな事が頭に浮かんだ。
そう考えると、また複雑な気持ちになる。
「いつかもらう」
「駄目って……ば。 ね、怜治」
「ん?」
「怜治ってSMとか、そういうの好き?」
「んー、あんまり」
最初のあれで気になってはいたけど、そこはノーマルなのかな。
「痛いやつは萎えるから。 縛るとか、普通のがいい」
やっぱりそんなに普通じゃないよ、それ。
初体験はいくつの時だったのかを聞いてみた。
「いつかな……15とか? 小夜子は?」
若干キャパを超えたので、嫉妬みたいのが吹っ飛んだ。
紀佳さん……
彼にどんな性認識を植え込んだんだろう。
「確か20とか、その辺。 怜治って少し変わってると思う」