第23章 6月1日 達郎の店
達郎は腕を組み遠い目をしたが、それでもどうかな、という風に首を傾げた。
「どんどん女っぽくなってく彼女を見て、そういう気分になったこともあったかも知れない。 けど、こんな頃から自分の名前呼びながら一生懸命後ついてきた子に、変なこと出来ると思う?」
達郎が自分の腰の下辺りで手を止める。
確かに、そうかも知れない。
ついでにと言えばなんだが。
これを聞くのは失礼かも、と思いつつも達郎に尋ねた。
怜治は達郎は小夜子のために、他の女性と身を固める決心をしたのかと思ったのだ。
「今の彼女を普通に好きだと思います?」
それに対する達郎は即答だった。
「小夜ちゃんとは違う次元で。 捕まえとかなきゃすぐ、どっか行っちゃいそうで困る」
「分かります」
そう言って怜治と達郎はカウンター越しに再びグラスを合わせたのだった。