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あなたが愛してくれたら【R18】

第22章 6月6日 湊のマンション、レストラン



「けど、もう済んだ事だろ?」

「だって、今も」

「利用してるって言いたい?」


玲治の言葉に小夜子が頷く。


「そりゃ余計なお世話……つか、達郎さんもそんな事思ってないし」

「達っちゃん、が?」

「どうしても、小夜の方が大事で心配だったから、僕が勝手にそうしてただけって笑ってた」

「……………」

「俺もそう。 ただ小夜を好きだから、そうしたいだけだ。 嬉しかった。 病院で話した時、小夜が俺を軽蔑しなかったの」

「そんな事」


軽蔑なんて、何に対して?

確かに倫理的に間違っている。
けれど彼はそれで誰を不幸にしたというんだろう。
そんなつもりも怜治には無かった筈だ。

軽蔑なんて言葉は、あの時の小夜子の頭には一片も無かった。

大切にすべき一人の長い年月と、それ以上の人間も縛り続けた、自分の罪深さに比べたら。


「それだけで何かどっか、救われた気がして。 それと同じかどうかは分かんないけど、今小夜のそういうの聞いても揺らがないな。 紀佳の事ずっと見てきたから、報われなくて寂しいってのも分かんなくもないし」


小夜子とは対象的な、開けっぴろげな様子で怜治が軽く笑う。


「達郎さんを解放しようと思ってたんだろ? 何にしろ、嘘の彼氏作って今日まで、色々思う事もあっただろうに、よく我慢したよな。 泣きたいなら胸貸すけど?」


そんな彼を直視出来なくなり、小夜子は短く言った。


「要らない」

「冷たいな」


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