第22章 6月6日 湊のマンション、レストラン
駅から約5分程離れた所にある、ホテルのロビーに到着した小夜子は見知った顔を探しに辺りを見回す。
エントランスに入る途中にも見えた、広く樹木や花々が整えられた中庭が印象的な、落ち着いたホテルだ。
「達っちゃん!」
背が高い彼の傍にすらっとした女性がいた。
あの人がきっとそうなんだろう。
小夜子の声に振り向いた達郎が手を上げる。
しかしその途中で彼女が足を止めてしまったのは、居ない筈の彼が居たからだ。
「………何で、ここに」
「どうかした?」
何事も無かったかの様な怜治の表情。
彼の欠席を伝えていた筈。
困惑して達郎を見ると目を逸らした。
僅かに可笑しそうに口角が上がっているのは気のせいだろうか。
「………?」
「紹介するよ。 こちら澤田みのりさん。 こっちは姪の小夜子で、さっき来てくれたこの高階怜治くんの彼女」
「はじめまして、よろしくお願いします」
「あ、よろしくお願い致します」
小夜子より少し歳上だろうか。
落ち着いて、華やかな印象の女性だった。
見た目にも似合いの二人。