第22章 6月6日 湊のマンション、レストラン
日曜の朝、小夜子は休日にしては早起きをし自宅の家事を済ませ、出掛ける支度に取り掛かっていた。
本人も深く考えた事は無いが、気が沈みがちな時や悩みがある時に、慌ただしく動きたくなるのは小夜子の癖だ。
達郎の婚約者。
小夜子にとっての両親、達郎から見れば姉や義兄にはもう顔合わせは済ませてあるという。
急な話だとも思ったが、知り合いの期間は長かったらしい。
「あの子ももう悩んでる歳じゃないしね。 これ、と思う人が出来たら早めに進めた方がいい」
小夜子の母親がそう言っていた。
そんなものなんだろうか。
だが、確かに大人になればなるほど枷は増えていく。
小夜子でさえ仕事があるし、ましてや達郎は自営業であり、自身のマンションも購入している。
ある程度、思い切りが必要だという事だろう。
呼ばれてるとはいえ今日は主役は向こうなのだからと、膝下のワンピースに紺色のジャケットを選んだ。
昨日用意しておいた婚約祝いのブリザードフラワーのギフトボックスの手提げ、それとバッグを腕に掛けて、小夜子は家の外に出た。
気にしていた雨もなく、雲の隙間からは日が差している。
いい日和だ、と小夜子は思った。